【三題噺】絵空模様【バレッタ/携帯電話/絵はがき】

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皆サーーーン!
オッハヨウゴジャイマース!!!
九条カレンぽけです。


今回は、唐突に文章が書きたくなったので、以前フォロワーさんたちと行った三題噺を1人でやってみました。

【三題噺とは?】
指定された3つのキーワードを用いて作文書く的なものです。

お題は、
バレッタ
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オタクは知らないですよね。僕も知りませんでした。
髪留めみたいなものです。

【携帯電話】
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化石じゃないよ。
今はスマホが普及してますが、今回はこちらをイメージしてください。

【絵はがきf:id:karen_poke:20180115174046j:plain
その名の通り絵を描いて出すハガキですね。

今回はこのお題をもとに書いていきます。
前回より短くなると思うんでよかったら読んでくれると嬉しいです!!!
それではどうぞ( •̀ᴗ•́ )/

****

絵空模様


夕闇に染まる道を歩く。はぁ、と吐いた白い息が悴んだ手を覆い被せ、すぐに消え去った。
先輩と二人で帰ったこの道を一人で歩くようになってもうすぐ一年が経とうとしている。そんなことをふと思い出し、風はよりその冷たさを増したように感じた。

先輩と私は同じ美術部だった。
人懐っこくて優しい先輩に、内向的な私が惹かれるのにそう時間はかかることもなく、入部してから1年が過ぎた頃に勇気を出して告白した結果、初めての恋が実ったのだった。
先輩は優しかった。何もかも初めてだらけで戸惑う私に足並みを合わせて、ゆっくり、ゆっくりと、少しずつ幸せな時間を積み重ねていった。

だが、時間は有限だった。
先輩は程なくして卒業、東京の大学へと進学していった。私達の住む町は所謂田舎のようなところだということもあり、進学するには必然的に遠く離れた地へ行くことになる。頭では当然分かっていたことだ。しかし、私は大好きな先輩が遠くに行ってしまうことがあまりにも辛く、先輩の前でみっともなく泣きじゃくってしまった。そんな私の頭を、やっぱり先輩は優しく撫でながら「遠距離でも大丈夫だよ。一緒に頑張ろう」
と、慰めてくれたのだった。

先輩が東京へ行ってからは、こまめに連絡を取り合った。電話やメールという手法で気軽に連絡が取り合える時代だったことに本当に感謝している。
今日も私は、帰り道で先輩への一日あったことを報告するメールの内容を考えながら歩いていた。

ふと、空を見上げる。
透き通った空気の向こうで、もう殆どが暗く染まった夜空にぽつり、ぽつりと輝く星が並ぶのを見つけた。
「そういえば、都会は星がよく見えないって言うもんね」
私は、携帯電話のカメラを起動し、夜空めがけてシャッターを切った。
静かな町に微かに響いたシャッター音の後、ディスプレイに表示されたのは、ただ真っ黒に映った空だった。
むぅ、どうにか綺麗に写せないものかな。
空は夕陽と闇夜が入り混じった綺麗な色をしているし、星はそんな夜空に白くアクセントを加えている。こんなに美しい空でも、カメラ越しでは何も分からなくなってしまう。きっと日頃と大した差のない風景なのだろうけど、目にしてしまったからには残しておきたくなってしまうし、先輩と綺麗なものを共有したい。
しばらく悩んだ末、私は名案を思いついた。
「そうだ、絵はがきにして先輩に送ろう」
そう呟いて、小走りで帰路を辿った。


「さぁ、描くぞ」
帰り道で買ってきたはがきと、水彩絵の具を自分の部屋の机の上に広げる。
「思えば、こうして絵を描くのも久しぶりだなぁ」
先輩が卒業してから、私は三年生になり、進路を決めねばならなかった。それまで特に希望がなかった私は、東京の大学へと進学を希望した。しかし、先輩の大学に入るためにはもっと成績を上げる必要があったため、部活を引退して以来ずっと勉強漬けで絵を描くことがなかった。
私は久々に握った筆に少し心を弾ませたものの、ハッと『いつもの準備』をしていなかったことを思い出し、一旦筆を置く。そして、長く伸びた髪を後ろで纏めて、バレッタで留めた。
まだ付き合う少し前、部室で絵を描く私のところに突然先輩が現れて髪の毛をふわりと持ち上げ
「ほら、髪が汚れちゃうよ」
と、優しく後ろで纏めて持ってくれたことがあった。初めて男の人に髪を触れられたこと、それが大好きな先輩だったこと、色んなことにドキドキとして、思わず舞い上がってしまうかのような気持ちになった私は、それ以来、髪を伸ばすようになった。
そうしていると、先輩がふと気づいて来てくれる。ちょっぴり狡いやり方なのかも、なんて思ったけど、それ以上に嬉しくてたまらなかった。
付き合い始めてから、しばらくして先輩と卒業の話をするようになり始めたころ、
「先輩が卒業しちゃったら、私の髪の毛が絵の具でいっぱい汚れちゃいますね」
なんて冗談混じりで言ったら、確かに!なんて笑っていた先輩が、後日私のところへ来て
「俺が卒業したら、今度はこれ使ってよ」
なんて言いながら、可愛い星のついたバレッタをプレゼントしてくれた。
それ以来、私は絵を描くとき、ずっとこのバレッタで髪を纏めるようになった。先輩が傍に居なくても、先輩の優しさが感じられるような気がして、心が温かくなった。

髪を纏めた私は、筆を握ると、絵はがきに夜空を描き始めた。すぐ傍の窓から覗く月明かりが手元を照らし、窓の外を見上げると、紺碧に広がった空いっぱいに小さな星明かりが煌めいていた。
先程とはまた表情を変え、それでいて劣らず美しい夜空に私は息を飲み、その夜空の紺碧をはがきに落としていく。
ーーーこんなに綺麗な空だったら、先輩もたまには帰って来たくなっちゃうかな。
絵はがきを受け取った先輩の表情を思い浮かべながら、軽快に筆は進んでいく。

そうして一通り空を描き終えたところで、携帯のディスプレイに『新着メール 一件』と通知が来る。
「先輩だ!」
まさに想い浮かべながら絵はがきを描いていた相手からのメールに笑顔を浮かべながら、私は携帯電話を開いた。
そして、先輩から送られてきたメールを、一文一文しっかりと読んだあと、月明かりの覗く窓を見上げる。

窓の外には、滲んだ星空が広がっていた。

私は、もう一度筆を取り、はがきに描かれた夜空へ白く輝く星を落とす。

とっ、とっ。
小さな星を何度も、何度も。

とっ、とっ。
先輩へのたくさんの想いを。

とっ、とっ。
大好きな先輩との思い出の数だけ、私は夜空に打ち込んだ。


****

【エピローグ】


空が白み始める。
窓から射し込む柔らかい光が、すやすやと寝息をたてる少女と、宛先の無い手元の絵はがきを照らした。
数えきれないほどに打たれた白い星は滲み、空に溶け、窓の外から覗く黎明の空と同じ色をしていた。


【風俗レポ】こじらせたオタクが初めておっパブに行った話

皆サーーーーン!オッハヨウゴジャイマーーーース!
九条カレンぽけです。

今回の記事は、すっかりオタクをこじらせたキモオタの僕が、人生初のおっパブに連れてかれたお話です。

****

事の発端は元旦、深夜1時半過ぎくらいに突然掛かってきた高校の同級生からの電話でした。
「あけおめ!飲みにいこうぜ!」
まさにウェイの権化と言わざるを得ない行動力である。
そんな同級生と、その幼馴染み(♂)、もう1人高校の同級生を交えて4人で飲み会をすることになりました。

午後3時過ぎ、待ち合わせ場所に指定されていた駅前のローソンに辿り着きました。しかし見知った顔はそこにはない。待ち合わせ時刻を過ぎていたので連絡を入れると
「今(ローソンとは反対側の)喫煙所にいるよ」
との返事が。開始早々こいつらはポケモンオタクに引けを取らないほどのガイジなのでは?とこの先のスケジュールが心配になります。

合流後、そのままボウリングへ。
朝から何も食べていなかったため、チュロスを購入し食べていると、同級生二人はプレミアムモルツを購入しグイグイ飲みながら投球していました。こいつらボウリング場を飲み屋と勘違いしてないか?呆れ果てた僕はスミノフを購入し飲みはじめました。

そんなこんなで賭けボウリングに勝利しボウリング代を0円に抑えたところで、居酒屋へ足を運びます。

男4人、しかも彼女ナシの面々が集まった訳だから、下世話な話が始まらない筈がない。直ぐに話題は

「風俗行きたくない?」

というものに行き着きます。
お恥ずかしながら、人生で1度も風俗の門を叩いたことがない自分は、1人の男子として当然のように風俗に興味を持っていました。
幸か不幸か、前述した通り現在彼女も居ない、止めるものは何も無い状況だったため、自分も勢いよく乗っかっていきます。

さて、ここから行く店を選ぶのですが、一口に風俗と言ってもピンサロ、ソープ、キャバクラ、ガールズバーなど様々なものが存在します。
ピンサロやソープといったものは射精に至ることが期待できるかわりに高価になり、キャバクラやガールズバーはそういったことが出来ない代わりに安価で抑えることが出来る(遊び方にもよるが)そうです。
そして今回は、その丁度中間地点と呼べる位置にある「おっパブ」に行くことになりました。
ちなみに、僕も今回行って初めて知りましたが、おっパブというのは「上半身のみ良識の範囲内で何してもOK」って感じのお店です。
太もも触ったりしたらペナルティですし、射精もできません。ただ揉んだり舐めたり(軽く)吸ったりキスしたりする感じです。
当然この知識を得た段階の自分は「高い金払って射精ナシとかおかしいだろ!!!!!!!!!!」なんてことを言っていたのですが、おっぱいへの愛には抗えません。満を持してお店へ入りました。

お店へ入ると、なんと30分ほど待ち時間が発生していて、その間隣接するキャバクラに行くことになりました。こちらになんと中学時代の同級生がいて心の中で思わぬ偶然に笑ってました。

そして、時間になり、いざおっパブへ。

入店し着席するなり、4人の隙間隙間に女の子が配置されていきます。女の子たちは微妙にコスプレ要素を含んでいるようで、僕の相手は女教師(わりとかわいい)でした。ほかの3人に付いた人を見回しても、恐らく「当たり」と言えるレベル。心の中でガッツポーズをしていました。

黒髪のボブでスーツに身を包んだ女の子(まひろちゃん)が僕に飲み物をお酌してくれて、乾杯してから会話開始。出だしは普通のキャバみたいな感じでした。
「こういう店初めてで緊張してるんですよね」
って普通に言ったら可愛いって言われました。アド。
後で聞いたら自分より4つくらい下の子でした。そんな子に可愛いって言われちゃうのめちゃくちゃオタク感ありません?
そんな感じで他愛もない雑談をしていると、お楽しみタイム的な感じで女の子が自分の太ももの上に跨って来ました。いやこれどうしたらいいんだって困惑してるとまひろちゃんが耳元で「脱がせて」って囁いてきました。オタクってこういうの弱いんですよね。とりあえずブラウスのボタンを外すと、思ったより控えめなおっぱいが露わに。おっパブってみんなおっぱい大きいのかと思ってたんですけどそんなことなかったんですね。そこは期待してた分少し残念に感じました。

そんな感じで脱がすだけ脱がすと、まひろちゃんの方からキスしてきました。軽いのから深いのまで一通りしてみた感じ、流石こういう仕事だけあってキスは割と上手いな〜とオタク特有の上から目線で分析をしてしまいました。本当オタクはタチが悪いですね。

とりあえずおっパブと言うくらいだから、おっぱいを揉んだりしとこうと思ったのですが、期待してたほどの容量がなかったこともあり、とりあえず欲望のままに揉む!というより、彼女にする前戯みたいな感じで揉んでいると、まひろちゃんは度々感じた甘い声を出したり、僕の股間の上に股を擦り付ける動きをしてきました。流石風俗、サービス精神旺盛だなーなんて思ってたんですけど、これ案外やってくれる人いないみたいですね。普通に気持ちよくなってたんだとしたらちょっと嬉しいです。
そんな感じで暫く楽しんでるとまひろちゃんは「ねぇ…このままここに居たいんだけど…」と囁いてきます。所謂指名って奴ですね。料金プラスされちゃうんでするつもりは無かったんですけど、周りにやっぱり「ハズレ」みたいな子もいることや、股ズリサービスとかが普通に嬉しかったこともありそのまま指名することに。
その後もお酒やおつまみで見事に貢がされました。いやほんと上手だなぁと思います。
お仕事だと分かってはいるんですけど、普段こじらせたオタクが可愛い女の子に可愛く微笑まれながら「かっこいい」とか「可愛い」とか「今のお客さんの中で一番タイプ」とか言われたらそりゃ抵抗出来ないですよね。慣れてなさすぎて普通に嬉しいし照れちゃいました。ちょろい。
あと、LINEを交換することになった際、まひろちゃんが登録作業をすると僕からスマホを取って操作した際に

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この待ち受けと、

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このキーボードをおもっくそ見られて死ぬかと思いました。普通にノリノリだったからさらにまひろちゃんの好感度が上がった。

そんなこんなで時間が終わったのですが、連れの1人がノリノリで延長。流れで僕らも延長することに。ちょっと嬉しかったとか言いませんけどね。ええ。

延長してからは普通にイチャイチャカップルみたいに雑談してました。癖みたいな感じで女の子の頭撫でちゃう事が多いんですけど、撫でてたら「もっと撫でて」って甘えてくる感じもオタクに刺さりました。


そんな感じで延長1回と指名やドリンク諸々込みで18000円。普通に本番出来る値段になってしまった訳ですが、不思議と後悔もなく、寧ろただ1度SEXするよりも心が温かいもので包まれたかのような感覚になりました。私事ではありますが、先日彼女と別れ、風俗に行く前日たまたまその彼女に出くわしたことも原因してるのだと思うのですが、普通に彼女と今までしていたかのような内容なのに、この上ない幸福感を感じていました。きっと自分でも気付かぬダメージでもあったのでしょう。

とまぁ、そんなこんなで今回の風俗レポは終わりですが、全部のおっパブがこんなにいい訳では恐らくないと思います。たまたま僕が運良くいい子に当たっただけかも知れません。それでも、あの時間、確かに僕は今年一番幸せを感じることが出来ました。

皆さんの中にも、風俗に興味があるという方が何人か居るかと思いますが、他の方のレポでもあるように必ずしもいい結果になるとは限りませんが、お財布などと相談し、計画的に1度行ってみてもいいと思います。

【三題噺】Twilight Sky【お題:兄/銀/夕暮れ】

この度、女装オタクの有馬さんに誘われて三題噺を書くことになりました。
他にも数名参加者さんがおります、合わせてお読み頂けると幸いです。
↓リンクはこちら↓
三題噺「兄」「銀」「夕暮れ」 - 夢も希望もないポケモンブログ


【三題噺ってなに?】
なんか複数人でお題を共有して、それぞれそのお題が含まれたお話を作ろう的なアレです。

初めての物書きなので色々と拙い上に長くなっちゃったので、読むのは大変かと思いますが、是非お時間がある時にでも読んでいただけると幸いです。
それでは、どうぞ。

****

『Twilight Sky』


全く、世の中というものは上手く出来ているものである。
「何か」で優位に立てる存在というのは、その分「別の何か」で劣る存在になる。
同じ人間に二物も三物もなかなか与えようとしない神様の優しさか、悪戯心なのか……そんなことは置いといて。
生まれて十余年、ごく一般的と言えるであろう生活を送ってきた。良く言えば何の不自由もなく、悪く言えば世間から注目されることもなく、聞く人が聞いたらきっと猛烈に怒られるとは思うが、しばしばそんな「普通の自分」に嫌気がさす。
そんな、ある種の贅沢とも言える悩みを抱える俺には二つ下の弟が居る。そう、弟が居るのだ。
こんな「そこら中の人達が特技にしている事を一日見学してきました」くらいの知識と技量しか持ち合わせていない自分の弟なんだから、さぞかし中途半端な人間なのだろうかと思えば、なんということだ。同じ親から産まれたのに自分と比べて……いや、同級生全員と比べたっていい。運動をさせたらどんな事だって一際輝く存在になり、勉強に於いても上位に名を連ね、容姿は自分と兄弟だけあって似ている。そう、似ているのだが明らかに「質」が違う。俺の身体の全てを一流の職人が上手に仕立て直したかのように整っている。そんな高スペック弟なのだからさぞかし内面でも腐っているのかと思えば、あぁなんと無情なことか。この弟、性格までしっかり出来ているのである。優しさを持ち合わせつつも、年相応の無邪気さを兼ね揃えていて、いつも友達に囲まれている。もし「上位互換」という言葉に実家があるのなら、きっと俺と弟の間に存在するのだろうと言いたくなるような存在だ。
そんな弟に対して、俺は『兄』という点でしか優位性を持つことが出来ない。そんなことを考えてしまう自分の醜さに対してまた嫌悪感を抱く。こうした一種のコンプレックスのような感情を内に抱えつつも、何とも出来た弟である故か、兄として誇りに思ってもしまう。これもきっと弟が優れた存在だからこそなのだろうが。

はらり。

そうやって無駄に自分の境遇を見つめ直しながら歩いていると、街路樹から色付いた葉が僅かに濁りを混ぜ一枚、一枚と降ってくる。
「秋も終わるなぁ」
思わず溜息混じりの声が漏れた。
もう木の葉も色を搾り終え、冬を待つ時期。俺達にとってそんな季節は、こうして降ってくる落ち葉の色のように、僅かな期待と不安がおり混ざったものだ。
俺は高校で美術部に所属している。
秋と冬の狭間、芸術の秋に別れを告げる為の祭りであるかのように、この時期になると辺りの高校が合同で絵画コンクールなるものを開催し、美術部員は総出でこのコンクールでの受賞を目指すことになる。当然俺も例外ではないし、何となくの趣味の延長線上とは言え、好きで入部したこの美術部の一大イベントには、人並みに熱が入っている。
今年で三度目、このコンクールを終えると本格的に進路に備えての活動が始まるため、部活も引退となる。一年の頃はただ作品を完成させるだけになってしまったが、二年の時にはこのコンクールで銅賞を獲得することが出来た。何か賞を貰ったことなんて人生振り返っても一度たりともなかっただけに、当時誰もいない所で嬉しさを抑えきれずガッツポーズをして喜んだ記憶がつい先日の事のように浮かんできて、つい顔が蒸気してしまう。
「おい兄貴〜、何ニヤニヤしてんだよ」
ふと耳の近くで声がした。あまりに突然の出来事に跳ね上がる心臓の勢いのまま明後日の方向に飛び出してしまうと、そんな様を見た弟がケラケラ笑いながら立っていた。
「ビックリさせるなよ、陽介」
俺は今もなお跳ねている心臓を抑えながら、一つ咳払いをし、改めて弟の陽介の隣に並び直し、歩き出す。
「ごめんごめん。なんか嬉しい事でもあったの?まぁ大方、『これから起こるであろう嬉しい事』の妄想でもしてたんだろうけど?」
陽介が意味ありげな笑みを浮かべながら問いかけくる。ぐぅ、こいつは昔から察しがいいんだよな。
「うるさいな、別にそんなんじゃないって」
口では強がって否定したものの、実際そうだった。三年間の部活を通して少しずつ自分も成長してる自信があったし、昨年の受賞も含め、人生で初めて「特技」と呼んでもいいのかな、なんて思っていた程度に絵を描くのは好きだし、それなりに自分の技量に対して自信を持っていた。
今年こそは金賞を。その一心で去年以上に工夫と時間を注ぎ込んで仕上げた作品は、贔屓目抜きに見てもいい作品なんじゃないかと思える出来になった。だからこそ、もうすぐ控えた結果発表には期待と不安が一層強く混ざっている。
「そんな事より、お前も今回出品側の人間だろ?大丈夫なのかよ」
「うーん、やっぱり一年にはまだ難しいからねぇ。完成はするけどさ、あんまり自信はないよ」
「そっか」
弟は俺と同じ高校に進学し、さらに同じ美術部に入部した。俺が中学では帰宅部だったのに対して、弟はサッカー部だった。どれほどの実力なのかまでは知らないが、レギュラーとして普通に活躍していたと親から聞いた覚えがある。
そんな弟が、もっと上のレベルを狙えた筈なのに、『家から徒歩で通えるから』なんてつまらない理由でランクを一つも二つも下に落とした高校へと進学し、更にはサッカーをスッパリ辞め、今度は文化部に入部したのだから、いやはや天才の思考はよく分からないものだ。
「まぁでも兄貴が描いてるの横からチラッと見てたけどさ、メチャクチャ頑張ってたし、実際自信もありそうだから、今年は金賞ねらえるんじゃない?」
陽介が茶化し混じりで横から肘で続いてくるのをヤメロと手刀で払いながらも、やはり自分も期待の方が大きいのか、
「だといいけどな」
と少し笑いながら返していた。

****

「お〜い!月兄!陽介!もう部室前にコンクールの結果発表、貼り出してあるみたいだよ!」
空が大きく手を振りながら駆け寄ってくる。
そう、通学路の落ち葉に季節を感じたあの日から数日経った今日、待ちに待ったコンクールの結果発表当日を迎えた。
学校に到着し、自分の教室へと向かおうとしていた俺と陽介のもとへ駆けてきた女子高生は空。家が近所で昔から幼馴染として俺達兄弟と仲良くしてきた彼女は学年で言うと俺の一つ下にあたり、中学、高校とサッカー部のマネージャーをしている。
陽介と同様、小学校からずっと同じ進路を歩んできて、同じ高校に入学した後もこうして小さな犬が飼い主に懐くかのようにニコニコしながら俺達の所へとよく駆けてくる。兄貴離れしろよ、などと茶化しながらも、そんな様が何だかんだ愛おしく思えてしまうようになったのは、一体いつからだったのだろう。
「おはよう空姉!もう確認してきてくれたんだね〜、美術部じゃないのに凄いよその行動力……」
弟は笑いながら言うが、内心俺もそう思う。サッカー部の朝練で学校に早く来たついでとはいえ、自分は関係ないのにマネージャーの仕事を終えたあと、その足で真っ先に確認をしてくれたことになる。陽介もそうだが、大概彼女も性格がいいんだよなぁ、と一つ下の女の子に感心させられてしまう。
「ねぇ兄貴、今から確認しに行こうよ!」
「ん?お、おう……」
陽介に半ば強制的に連れられつつ、俺達は美術部の前へと向かった。

****

別棟にある美術部前廊下。特別用事がない限り、この時間にここを歩く生徒はほぼ居ない、そんな学校の片隅にある美術部の入口のすぐ隣の掲示板に、コンクール結果が書かれた大きめプリントが張り出されてある。
俺達三人が到着した時にも案の定他の生徒の姿はなく、パタパタという俺達の足音が廊下の隅まで響いていた。
さて、気になる結果は……と指でプリントの文字をなぞりながら、入賞者の名前を探す。
「ええと、秋山……月人……」
そうして金賞の項目を見つけた。僕は1年間夢見たその項目を、ゆっくりとなぞる。

「金賞……」


俺は、読み上げた。


「金賞……秋山……」


そこに書かれた、幾度となく口にしてきた、


「陽介」


弟の名を。

「えっ……」
プリントの前に立つ俺の後ろに立っていた陽介と空が声を漏らす。
俺がプリントを指していた指を下ろし、スッと横に逸れると、そこに入れ替わるようにして空が入ってきて、歓声を上げる。
「すごい!すごいよ陽介!一年生で金賞だよ!おめでとう!しかもほら見て、銀賞には月人兄ちゃん!二人揃って入賞!」
空の嬉しそうな声が静かな廊下に響き渡る。空はまるで自分のことのように喜び、陽介の手を取りながら、満面の笑みでピョンピョンと跳ねていた。
「あ、ありがとう……」
そんな空とは対照的に、当事者である陽介はどこか固い笑みを浮かべながら、チラリと俺のほうを見た。
……あぁ、お前は本当に察しがいいんだよな。
陽介が何か言いたげに口をぱくぱくと動かしては閉じるのを繰り返している様を見て、俺は肩をポンと一度叩いて、
「おめでとう、陽介」
と言って、美術部に背を向け自分の教室へと歩き出した。
「兄貴!」
静かな廊下にパタ、パタと規則的に響いていた足音が次第に乱れ始める。自然と自分の歩が速くなり始めた所で、後ろから陽介に肩を掴まれた。
「兄貴、その……」
呼び止めたものの何を言うべきか纏まらないのか、陽介はバツの悪そうな表情をしたまま視線を足元に落としている。
俺はそんな陽介の顔を見たまま、
「陽介、お前ってすげえよ」
ポツリと言葉を漏らした。
「何だってすぐ出来るし、すぐに俺より上に行っちまう。俺のほうが兄貴なのにな」
まるで身体に鋭い刃物を刺され、ドクッ、ドクッと鼓動に合わせ血が吹き出していくかのように、今までずっと秘めてきた気持ちが勝手に口から漏れ出す。
「俺が本当はお前よりも優れていて、いつも背中を追いかけられるような存在でいる。それが兄貴なのにな。全然そうはなれねぇや。ごめんな」
「兄貴、そんな事は」
陽介が何かを言おうとするが、俺の口から溢れる言葉はそれを遮り、なお止まらない。
「俺は! 俺は……お前が羨ましいよ。俺の欲しいものは全部お前が持ってる。俺には何がある? 何にもないんだよ! 俺の出来ること! 望んだもの! 愛しい人だって……全部お前の方が上手く持ってっちまう! お前の周りはいつだって綺麗なもので溢れてるよ! でもそれはお前の一番近くにいる俺も同じ訳じゃない! お前が太陽みたいに輝いてるから! 皆がその光に惹かれて集まるんだよ! 同じように出来ないかなって、俺もお前みたいになれたらなって思った事もあった! でも駄目だったんだよ! 俺にはお前と同じようには出来ない!」
分かってる、分かってるんだ。今言っている事のなかに何一つ陽介が悪いことなんて一つもない。自分が上手く行かないだけのことを、勢いに任せてぶつけてるだけの八つ当たりだ。このまま続けたら、きっと勢いに任せて良くないことを言ってしまう。そんな気がした。
ダメだ。これ以上は。
「違う、兄貴……!」

ダメだ、やめろ

「俺はッ!」

ダメだ

「俺は……お前がいる限り、この世に必要の無い人間なんだよ」
俺は、そんなことを思っていたのか?
最後の一言を言い終えた後、さっきまで身体中を燃え上がらせていた熱が、一気に温度を失っていく感覚に襲われる。違う。そんな事はない。そりゃ確かに優れた弟を羨むことなんて幾らでもあった。でも、俺はそれと同時に陽介のことを誇りに思っていたんだ。やめてくれ、陽介。そんな顔をしないでくれ。今言ったのは俺じゃない、そう。別の誰かだ。俺じゃない誰かが俺の身体を使って悪戯をしたんだ。何か、何か言わないと。今のは冗談だって、ごめんなって謝らないと。
「あ……」
俺が口を開いた瞬間に、パタパタと音を立てながら息を切らした空がこちらに駆けてきた。
先程は何も気付かなかった空も流石に二人の様子と雰囲気からただならぬ状況であることを察したのか、少し言葉を選びながら
「ちょっと……二人とも……」
と途切れ途切れに何かを言おうとした。しかしその刹那、廊下に予鈴が響き渡る。
陽介と空を前に何を言うべきか、まるで頭が纏まっていない自分にとっては救いの鐘とでも言えたその鐘を理由に
「……じゃあ俺、教室行くから」
と俺はその場を立ち去った。
今度は後ろから呼び止められることは無かった。しかし、最後に見た、普段無邪気に笑ってばかりいる弟の、今にも壊れそうな表情がいつまでも脳裏に焼き付いていた。

****

『月兄、ちょっといい?』
学校から帰宅し、部屋の中でただベッドに突っ伏していた俺に、空から連絡が入った。
あれから一日陽介とも空とも顔を合わせることも無く、引退となった自分は部活動のある陽介たちよりも早く帰宅し、一人部屋に篭っていた。
空からの呼び出しに応じ、制服姿に適当なコートを羽織って近所の公園まで出掛ける。カーテンを閉じ、明かりも付けないで部屋にいた時には気付かなかったが、まだ日は落ちていない。かなり長い時間が過ぎたように思えていたが、まだ夕方になる手前といった頃合いだった。
「お前、部活はどうしたんだよ」
公園に辿り着き、ベンチに腰掛けている空を見つけた俺は、挨拶も何もない第一声を投げかけた。
しかし実際、いつも遅くまで活動をしているサッカー部のマネージャーがこの時間に帰路についていることなんてまず有り得ない。俺は少なからずそのことも気になっていた。
「体調悪いって言って、ちょっと顔出して帰らせてもらった。普段ちゃんと仕事してるからかもね、あっさり信じて貰えたよ。えへへ」
なんて笑って見せた空も、何処と無く元気が無いというか、少なくとも笑みを作っているのはよく分かった。
「急に話ってどうしたの?」
俺は素知らぬ振りをしてそう聞いた。
きっと朝の事だ、そんなの俺だって分かる。それでもこのまま微妙な空気を長く維持させたくないという思いもあり、話のきっかけを作ろうとした。
「朝。二人に何があったの?」
「…………」
案の定、朝の話を持ち出してきた空に対し、俺は何と返すべきなのか、言葉をただ探し続け、沈黙を返してしまった。
「答えてよ」
空の言葉に圧力が増し、俺は頭を掻きながら
「ただの兄弟喧嘩だよ」
と返した。
その返事を聞いた空は曇った表情を浮かべ、視線を落としぽつぽつと呟きだす。
「嘘。私、陽介にちゃんと聞いてきたんだよ? 陽介、月兄に辛い思いをさせてた、俺が居たから月兄は今までずっと苦しんでたんだって言ってた。そうなの?」
「それは……」
違う、とハッキリ言わなきゃいけない。
実際、俺はそんな事は思ってない筈だ。だけど今朝、不意に口をついたあの言葉が、本心じゃなかったのか、自分がどう思っているのか、考えれば考えるほど、自分すらその事が分からなくなっていた。
俺が言葉に詰まってるのを見ると、空は伺うように問いかけてくる。
「月兄は、そんなに金賞が欲しかった?」
「あぁ」
空の問いに、俺は小さく頷く。
「何で?」
そう問われ、ふと考え込んでしまう。
そう、俺は金賞が欲しかった。それは紛れもない事実だ。でも何で? どうして金賞が欲しかったんだ? そう考えると、不思議とその理由が出てこない。
好きなことで一番になりたかった、去年の受賞が嬉しかったから、それらは間違いのない事ではあるが、理由の全てであるかと言われると、どこか違う気がする。
「月兄は、陽介に何か一つ、明確に勝るものが欲しかっただけなんじゃないの?」
空の言葉に身体が跳ねる。そうなのか? いや、彼女に言われてはっきりと分かった。俺は形はどうあれ、陽介に対して劣等感を抱かなくて済むものが欲しかったのだ。
今まで色んな事に手を出しては辞めてきた。何でも自分より上手くこなす陽介と並ぶ事で、自分の才能の無さを自覚して、劣等感から逃げてきた。そんな中で陽介がきっと手を出さないだろう、これなら自分も頑張れるだろうという事をようやく見つけ、努力してきた。そんな所にまたやってきた陽介が、恐るべきスピードで自分の背後に迫り、そして今、自分を追い抜いていった。幾度となく繰り返してきた『当たり前』を、たまたま今回、少しの『期待』が悲劇に仕立てあげただけなのだ。
……なんだ、やっぱり結局今回も俺がダメなんじゃないか。そう思った途端、もう何もかもがどうでも良くなってしまった。
目の前にいる愛しい女性への体裁も、自分のこれから先のことも。全部全部どうでも良くなった気がした。
「月兄? 泣いてるの?」
「えっ?」
唐突に、空にそう言われて気づいた。俺の頬を、幾筋も、幾筋も、大粒の涙が流れ落ちている。
「あれ、なんだろ……ははっ。ダメだな……」
幾ら拭っても止まることのない涙。ぼやけた視界の先で、滲んだ空がまたゆっくりと、ゆっくりと問いかける。
「月兄は、銀賞って、嫌い?」
ああ、もう、ダメだ。
陽介と今朝話したときとは違うが、よく似た感覚だ。何か感情という大きな力に押し流されるようにして、俺の口から勢いをつけて言葉が飛び出す。
「好きな訳ないだろ! 二番だぞ! お前は陽介から何を聞いたんだよ! 俺はあいつに負けたんだ! 今回も! これから先だって! ずっとあいつには勝てないんだよ! それでいいなんて思う奴がいるかよ!」
まるで怒鳴りつけるように俺は空へと気持ちを吐き出す。場所も、相手も、何も考えていない。ただ自分の感情を、目の前にいる相手に思い切りぶつけた。それに対し、空は怯むこともなく、声を荒げる自分を真っ直ぐに、けれど優しく見つめ返して続ける。
「ねぇ、月兄は知ってる? 『銀』ってね、昔の哲学では『月』を意味してたんだって。逆にね、『金』は『太陽』を意味してたの」
「はは……は。なんだそれ……」
そうだ。『月』は『銀』で『二番』、俺にぴったりじゃないか。逆に『太陽』は『金』で『一番』。正しく俺達兄弟のことのようだ。
「ほらな、やっぱり」
「月兄、聞いて」
自嘲気味に口を開いた俺を制止しながら、空は続ける。
「確かに銀賞は、金賞より劣るものかもしれないね。でも銀賞は、月は、そんなに悪いものなのかな? 月兄は今、自分に銀賞が……月がぴったり似合う、自分はずっと一番になれない、そうやって思ってるのかもしれない。実際月は、本当に月兄みたいだよ。満月みたいにやる気で満ちたかと思ったら、いつの間にかぽっかり欠けちゃうことだってあるし。確かに太陽の陽介と比べたら、光の強さは少し劣ってるかもしれない。でもね、お日様が沈んだとき、真っ暗になった空を、世界を優しく照らしてくれるのはね。月の明かりなんだよ。月にしか出来ないの。ただ明るさが劣ってるっていうだけで、月が無くてもいい訳じゃないの。」
「空……」
「それにね?」
一言の後に、ゆっくりと深呼吸を挟んでからまた空は続ける。
「それにね、私だって。私だって、今の月兄みたいに苦しくなったり、悲しくなったりして気持ちが夜空みたいに真っ暗に沈んじゃう時があるの。そんな時にはね、いつだってお月様を探してる。太陽の光は眩しくて、明るいよ? でもね、太陽は夜空には眩しすぎちゃうの。お月様は優しく光っていて、満ちたり欠けたりコロコロ姿を変えちゃうからほっとけなくて、眺めてたらいつの間にか沈んだ夜空が段々明るくなっていって。そうして気付いたの。『あぁ、私はもうお月様から目が離せないんだ』って。明るさなんて関係ない。『月』を必要としてる人はちゃんといるんだよ。」
そこまで言うと空は一度俯き、軽く息を吸い込んだあとまた俺のことを見上げて微笑む。
「私みたいに、ね」
ふわりと空気を抱いた髪の毛が揺れた後に現れた彼女の顔は、今まで見たことのないような温かく、優しいものだった。
瞬間、頬を伝っていた冷たい涙が、温かくなった気がした。
結局、俺達兄弟の間で優劣を決めようとすれば幾らでも決められるのかもしれない。それでも、優劣なんか関係なく、俺のことを、太陽の代わりじゃなく月を月として必要としてくれている人が居る。少なくとも目の前に居る愛しい人はそう思ってくれている。それだけで、今まで心の中を厚く覆っていた雲が晴れたような気がした。
俺は無意識に、目の前で自分の肩くらいの高さにちょこんと存在している空の頭に掌を載せ、ゆっくりと撫でていた。感謝なのか、愛情なのか、きっと様々な気持ちが入り交じった末の行動なのだろう。やっている自分でさえ驚くような行動をとられて空は一瞬ビクッと驚いたようだったが、俯きながら何も言わずにその行為を受け入れていた。
「空、ありがとうな。」
俺は心からの感謝を伝える。空は俯きながらううん、と小さく呟き首を横に軽く振る。
「こんな最高の妹分が居るだけで俺は幸せ者かもしれないな?」
なんて少しおどけて俺が言うと、空は俯いていた顔を上げ、僕の方を少し見つめると軽く微笑んで頭の上から掌をゆっくり降ろした。
「……さて!月兄?お月様が今優しく照らしてあげなきゃいけないのは誰かな?」
とニヤリと笑う空の言葉でハッと我に帰った俺は、まだ一番大事な問題が解決していない事に気がついた。
陽介に謝らないと。仲直りしないと。
「ありがとう空。俺、行かなきゃ」
そう一言行って俺は駆け出した。

****

走る。
時刻は午後四時半過ぎ。美術部の活動は毎日最低でも午後五時まで行うことが決まりなので、この時間ならまだ陽介は学校に居る筈だ。
別に同じ家に住む兄弟なのだから、待っていればそのうち帰ってくる。しかし、今すぐ陽介と仲直りしたい。その気持ちが募った結果、俺は学校へと向かっていた。
「畜生、流石に、辛、いな」
途切れ途切れに言葉が漏れる。仮に同じ場面でも俺と弟が逆だったなら幾分も絵になるかもしれない。しかし、こちとら中高と自発的に運動せず生きてきた根っからの文化系である。大した距離ではないはずだが息は切れ、完全にバテていた。
公園から学校へつくのは午後五時前かと見積もっていたが、この調子だと少々超えてしまいそうである。その場合、最悪陽介が学校を後にしている可能性もあるため、できるだけ早く学校へと着きたい。
「待ってろよ、陽介。俺、やっと分かったんだ」
そう。俺は弟のことを尊敬もしていたし、嫉妬もしていた。とても立派な弟であり、兄の俺より優れた存在。だからこそ俺は昔からずっと弟とは別のことをしようとしてきた。それは弟に勝てる何かが欲しかったから……?そうじゃなかったんだ。俺は弟に勝ちたいんじゃない。優れてることを誇りたかったんじゃない。ただ誰かに、大切な人たちに、必要とされたかっただけなんだ。
空に言われて気付いた自分自身の気持ちが鮮明なものになるにつれて、自分のことで頭が一杯だった時には頭の片隅へと追いやる事が出来ていた、今朝見た弟の表情もまた鮮明に蘇ってくる。
どう思ったのかは分からない。けれど、きっと嫌な思いをした筈だ。そしてその原因が自分であるという事実に対して、俺は償わなければならない。
身体は重い。不器用な呼吸が更に胸を締め付ける。
だが走るんだ。お前は太陽だから、凄いやつだから、きっと俺が何もせずに居たって時間が経てば仲直りをしようと歩み寄ってきてくれるんだろう。でも、それじゃいけない。俺が月なら、お前が暗く沈んだ時には俺が照らしてやるんだ。
ふらふらになりながら校門をくぐった時、時計は午後五時十分を指し、校舎は真っ赤な夕焼けを羽織っていた。

****

「陽介!」
一日、叫んで走った末のガラガラになった声で弟の名前を呼びながら美術室の扉を開く。美術室に辿り着くまでに何人も部員達とすれ違った。コンクールが終わった直後だということもあるのだろう、ほぼ全ての部員が定時を境に帰路につくようだったが、その中に陽介は居なかった。下駄箱で靴を確認してから来たため、少なくとも校舎内、ほぼ確実に美術室にまだ居る筈だ。
窓から鮮やかなオレンジ色をした斜陽が射し込む美術室。その窓際で空色に染まった白いキャンパスを立て、椅子に腰掛ける陽介の姿があった。
「兄貴……」
勢いよく現れた俺を見て驚いたかのような素振りを一瞬見せた後、陽介は気まずそうな表情を浮かべながらこちらを向く。
そんな陽介の元へと俺は真っ直ぐ向かっていき、陽介の目の前で止まる。
「兄貴、その、あのさ」
「陽介」

言葉を探して歯切れの悪かった陽介に被せるように俺はもう一度、今度は落ち着いた声で弟の名を呼ぶ。
不思議なものだ。さっきまでの自分はきっと陽介と対面したら同じように言葉を探していただろう。だが今、あの時の自分が嘘のように心も頭も落ち着いていて、ただ真っ直ぐに陽介の目を見ることが出来た。
「陽介、さっきは本当にごめん。俺はお前に酷いことを言っちまった」
陽介は何か言いたそうに、けれど何も言わずに、視線を足元へ落としていた。
「あの時の言葉は……正直、嘘じゃないよ。でも、正しくはなかった。俺は何でも簡単にこなすお前の事が羨ましかった。どんなに努力したってお前のようになれないんだって思い知らされて本当に辛かった。けど、お前が居たら俺は居る意味が無いなんて、そんなことはなかった。正直、今はまだ、俺もその意味がちゃんと理解出来てないかもしれない。でもな、俺がまだ知らないことでも、気づいてない事でも、何かきっと意味があるんだって、またそう信じられる気がするんだ。その意味をこれからもずっと探していくから……俺が今朝間違ったことが、間違いだってお前にいつか見せつけてやるから、だからその……これからも、よろしく、頼む。」
陽介とこんなに向き合って、真面目な話をしたのはいつぶりだろう。思い返せば、そもそも喧嘩をすることもあまり無かった。俺の中にどこか『諦め』があったからなのか、単純に弟の出来が良すぎたせいなのか、その理由は分からないが、とにかくあまりに異質な状況であることと、弟相手に自分の心の中を包み隠さず真面目に話すその行為が何だか次第に照れくさくなってきて、話しているうちに視線は泳ぎ始めていた。最後に軽く頭を下げながら話を終え、ゆっくりと顔色を伺うように陽介を見ると、そこにはただ、呆然と涙を流し続ける陽介の姿があった。
「陽介?!」
慌てて俺が陽介の肩を両手で掴むと、呆然としていた陽介は次第に嗚咽を混じらせ、顔をぐしゃぐしゃにしながら口を開いた。
「っう……兄貴っ……俺……ほんと……っ、どうしたら良いのか……っ、もう……っ、嫌われちゃったのかなって……っ」
こんなに子供みたいに泣きじゃくる陽介を見るのはいつぶりだろうか。陽介はきっと、それほどまでに心を痛めていたのだろう。
考えてみれば当たり前だ、今回の件で陽介に非がある所なんて1つだって有りはしない。ただ俺の八つ当たりを受け、『お前なんか居なきゃよかった』と実の兄に言い放たれたようなものだったのだから、自分の立場でも傷つかない筈がないのは分かっている。しかし、動揺しきった俺は陽介が落ち着くまでゴメン、ゴメンなと言いながら陽介の背中を擦ることしか出来なかった。
暫くして陽介も落ち着きを取り戻し、瞳にたっぷり溜め込んだ涙を制服の袖で拭った所で俺はすぐ側にあった椅子に腰掛ける。すると、陽介がゆっくりと口を開いた。
「兄貴は本当に間違ってるよ。兄貴が居る意味が無い筈がないだろ。少なくとも、今までずっと一緒に過ごしてきた俺にとって、兄貴は絶対居なくちゃ駄目な存在なんだ。」
思わず、キョトンとしてしまう。
なんだって?
どんな事でも卒なく出来てしまう、これ以上ないくらい出来のいい弟。そんな弟に必要とされる理由が全く理解できない。
俺が頭の中でグルグルとその理由を考えていると、陽介はゆっくりと続けた。
「兄貴も知ってる通り、俺って中学の頃と部活も違えば、趣味だって頻繁に変わってるだろ?」
俺は頷く。確かに陽介は部活だけでなく趣味も昔とは違う気がする。例えばギターを始めてみたり、休みの日に出掛けては写真を撮って、今日は良いのが撮れたと自慢げに俺に見せてきたりと、本当に色んな事に手を伸ばし、その度に秘めた才能を垣間見ていた。
「色んな事をするのは楽しいし、好きだよ? でも俺も、何か一つ飛び抜けて夢中になれる何かをずっと探してた。色んな事に手を出したけど、モチベーションって言うのかな、長期的に同じ事を、やる気を維持したまま行うのが苦手みたいなんだ。色々と考えてやる気を維持しようとしてみたけど、無理だった。モチベーションを失っても、その状態でその何かをすることは出来るよ? でも、向上心がそこにはなかった。ただやってるだけ、遊んでるのと何ら変わりはないんだよ」
驚いた。俺から見たら、ちょこっとやればなんでも出来ているように見えていても、弟に言わせればその先へ何一つとして行けるものが無かったというのだ。
まさに天才の苦悩といった感じの、まるで自分とは次元の違っていそうな悩みを抱えていたんだなぁと、唖然としながら話を聞いていると、今度は陽介が俺のことを真っ直ぐ見つめ、そしてまた口を開いた。
「そんな時に兄貴を見たんだ。ちょうど去年の冬頃、絵を描いてる兄貴の姿を。正直普段はあんまり熱を見せない兄貴がただキャンパスと向き合って黙々と絵を描いていて、真剣で、でも楽しそうで。あぁ、俺にはここまで熱意を込めて何かを出来ないや、すごいやって。そう思った、心から尊敬したよ。俺も兄貴の後を追いかけたら、こうやってキラキラ輝きながら何かにハマれるのかなって、そう思った。だから無理言って兄貴と同じ学校に入って、同じ部活に入ったんだ。」
そういうことか。
何故、陽介が同じ高校に進学し、部活まで一緒の所に入ったのか。なんとなく誤魔化されているようで少しモヤッとしていた疑問の答えを、思わぬ所で知ることが出来た。
「兄貴と同じ部活に入って、毎日一緒に絵を描いて、今までの人生で一番何かを好きになれた時間だったし、結果として他人に最も評価してもらえるような作品を作れるようになった。でもそれは俺一人じゃ決してできなかった。兄貴がそばに居たからだよ、兄貴が居たから俺は頑張れた。兄貴が居なかったら、俺はきっと今までと同じように、成長することが出来なくなっちゃうんだ。だから、これからもずっと、兄弟として、仲間として、ライバルとして、一緒にやっていきたいんだ。」
瞬間、ぶわっと自分の中で何か熱いものが膨らんでいくような感覚になる。
なんて事だ。俺はついさっきまで、自分のことを必要としてくれる人なんて居ないと思っていた。しかし、空が、陽介が、俺の中の本当に大切な人達が、揃って俺のことを大切だと言うのだ。自分より何もかも優れてるとずっと思ってきた、そんな弟ですら俺が居ないとダメだと言う。夢でも見ているかのように信じられないことが、今、俺に向けてニコリと微笑みながら差し出された陽介の手と共に
目の前に存在しているんだ。

全く、世の中というものは上手く出来ているものである。
自分が心の底から求めていたものは、自分の一番近くに、ずっと前から存在していたんだ。
僅かに滲んだ視界の先に映る、沈みゆく夕日。夕暮れを迎える世界はこれまでと少し色を変え、窓から黄昏を孕んだ風が二人の髪を僅かに揺らす。
俺は差し出された手をしっかりと、しっかりと握り返した。


【おわり】

2017視聴済秋アニメ紹介



なんかTLでは「ポケ勢彼女の作り方」みたいなのがまた流行ってたみたいですけど、オタクはオタクらしくあるべきじゃね?


ってことで、今期観たアニメを紹介します。珍しく本数多めで皆さんが見たことないアニメもあるかもしれないので、良かったら気になるのを見つけて視聴してみてもらえると話し相手が増えて嬉しいです!


※一口コメントに関しては完全に主観なので実際と異なる場合があります


ブレンド・S

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色んな属性を持つ女の子たちが喫茶店で働くお話。今期一番期待してるかもしれない。

OPは曲と映像両方ともドハマリしました。

百合百合しいのを期待してる方には男の人も出てきますよって警告をしておきますね。

感覚的にはきらら系WORKING!って感じです


妹さえいればいい。

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アニメ版の画像用意出来なくてすまん…

カントク氏が原作絵を担当しているってだけで惹かれる所がありますが、話そのものも1話の引き込み度は随一だったと思います。なんてメチャクチャなアニメだと思いました。

期待していた通り女の子可愛いのでこちらもオススメの作品です。


血界戦線&BEYOND

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血界戦線の2期です。

血界戦線と言われても知らない人はそれなりに居るかもしれませんが、1期のEDはあのシュガーソングとビターステップでしたって言うとマジか!ってなる人も多いのでは?

もちろん1期から観て貰うのが一番いいですが、その前に2期1話で雰囲気を知るのもアリではないでしょうか。この作品は本当に舞台や「カッコよく魅せる」などの雰囲気作りがとてもいいと思います。


干物妹!うまるちゃんR

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こちらも2期。基本一話完結なので2期から入るのもいいとは思いますが、1話の構成見た感じはやっぱり1期から観たほうがいいなぁとは思います。その前提で内容に関して言うなら1期そのままの感じで来てますってくらいでいいのでは?説明不要な作品だと思います。



ラブライブ!サンシャイン!!】

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こちらも2期。説明も不要ですね。

知らない方は僕よりこの作品好きなオタクごろごろいると思うんで、そちらへ尋ねてもらったほうがより魅力が伝わると思います。



アイドルマスターSideM

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野郎しか出ねぇじゃねぇか!

で切るのは勿体無い。

アイマスで培われた土台があるためか、その辺の女性向けアイドルアニメよりクオリティの高さを感じます(過去に数本観てました)

今後に期待してます


このはな綺譚

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ケモ耳最高!!!!!!

今期百合百合しいものを欲しがるならこの作品ではないでしょうか。癒し力が半端ない。

主人公の-◇-こういう顔とか大好きです。



ろんぐらいだぁす!

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チャリンコアニメ。

主人公がCV.東山奈央だということに釣られて視聴しました。

雰囲気はヤマノススメみたいな感じに近いと思います。



食戟のソーマ 餐の皿】

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3期。こちらも説明不要かと。

どの辺までやるのかわからないですけど、個人的には面白い展開は前期とこの次の4期辺りに来てここは中だるみするような展開(原作だと)だというイメージだったのですが、どうなるでしょうか。


【Just Because!】

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キャラデザ比村奇石氏で「?!」ってなりました。1話もよかったですけど、今後の内容で化ければ覇権取ってもおかしくないポテンシャルがあると思います。



キノの旅

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長かったので正式名称割愛してすいません…

お恥ずかしながら原作読んだことなかったのですが、メチャクチャ好みな雰囲気でした。なんか世にも奇妙な物語を思い出すんですけど僕だけですかね?



つうかあ

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可愛い女の子一杯出てきそうです。

レース系のアニメは初めて見たので実在する競技なのか等の細かい要素は分かりませんけど、今後の展開次第でいいアニメになりそうです。熱い展開多い作品だといいなぁ。




とりあえず今期から新規で始まったもので視聴したのは以上になります。

時間がある時に放送時間とか追記するかも。



個人的にはブレンド・Sこのはな綺譚キノの旅妹さえいればいい。が今期のお気に入りです。個人的には豊作と言えるシーズンなので、皆さんも色んなアニメ観て面白いのがあったら教えてくださると幸いです٩(๑òωó๑)۶

へべれけオフ オフレポ



今回は自宅ブロックから参加でした




死にたい






ブログ名変えました



長らく使ってた「ポケ問のすゝめ」がとあるポケサー名になってアレなんで変えました



今後ともよろしくお願いします

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