企画『三題噺「ガラス、財布、血」』に読み手で参加しました。
タイトルの通り。
フォロワーのあるるんさんがそういう企画をやるから審査員的なのやってくれということで快諾。
オタクなので何かを評価するのが大好きだ。
で、三題噺ってなに?ってなったんですが、なんでも「3つのキーワードを用いてお話を作る」ってヤツらしいです。
こちらが先ほどお話に出たあるるんさんの記事。(お話もこの中にあります。)
そして他に参加者さんがもう2人。
こちらはご両名ともにつながりが無いのですが、とてもいいお話でした。
・シアさん
・ノアさん
繰り返しますが、
どの作品もめちゃくちゃ良かったです!
全員が同じお題で作っている話なのに、全員毛色が違う!なにこれ3すくみ?!
って感じで1つを決めるのが凄い難しかったです。
でもまぁ任された以上絞らねばならない、ということで、それぞれ異なる良さのある3作をどうにか同じ観点から評価しようということで、「基準」を設けました。
それは「どれだけお題が内容のキーワードとして活きているか」です。
(詳しいルール説明はなかったので推測ですが)ルール上、キーワードは使用されていればいい、ってことしか制限が無かったように見えたので、極端に言えば「りんご」というキーワードに対して、「居間にあったリンゴをかじり・・・」という、代替のききそうな使い方でも、リンゴをめぐって宇宙戦争をするようなテーマの使い方でも構わない状況で、どれだけそのキーワードを自然に、かつ重要なものとして話の中で扱えているように感じたか。ここに重きを置きました。
その結果、僕が1位に挙げたのはあるるんさんの「クラック・ガール」でした。
僕がいいと感じた点をこれ以上語るよりは、皆さんに読んでみて欲しい!ということで、本来この結果だけで終わっておこうと思っていたんですが、せっかく3作品読んだ以上、一端のオタクとしては偉そうに語らないと気がすまない!ので、全作品読んだ感想をこの下に書いていきます。
ネタバレ全開なので頼むからホントまず上のリンクから作品読んできてください!!!!!!!!!!!
と、いうわけで一旦ここで締めます。
感想の方は、あるるんさんはともかく繋がりのないお二方の作品にまで偉そうなこと言ってるかもしれないんで、作者さんとかが仮にこの後を見て気分悪くしたらゴメンナサイ・・・(小心者)
全部いいと思ったのは間違いないですから!!!!
ってなわけで、以降読んでの憤り等に関しては受け付けない方向でどうか、スンマセン・・・!
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っというわけで、
一つ一つ順に感想をば。
まずは、あるるんさんの作品。
彼のお話はガラスが密接に絡んできていました。自分で挙げたワードみたい?
書き方は小説調とでも言うべきか、導入でガラスをいきなり持ってくることにより話の軸にキーワードがしっかり乗ってきています。
まず第一に彼のイイところは、キーワードに対してしっかり考察、調査がなされている点だったと思います。
「ガラスの心」なんて言葉が浸透しているくらい、元々ガラスと人の気持ちは『相性がいい』組み合わせで、例えば「硬いが脆い」「光を通す」「屈折」「破片が鋭い」なんて性質それぞれが、人間関係や心理を比喩する上で使い勝手も良く、この作品中でも例えば「教室には見えない壁がある。しかも、誰でも簡単に通り抜けられる壁ばかりではなくて、ほとんどが特定の誰かにしか通れない壁だ。」といった部分は「見えない壁」がガラスの性質とも取れるし、終盤で出てくる過去の記憶の男性は自らビー玉(ガラス玉)を比喩の対象にしています。このように数ある性質をしっかり抑えてるあたりが「はなしづくり」になれている感を感じました。
また、本人は「財布(キーワード)が邪魔だった」と言っていますが、個人的にはこのキーワードを絡めてくる過程の話が、先述した「光の屈折」の性質を利用して、主人公が自分の「日常の光」から本来あるべきであろう色付きや姿を屈折させているという所謂キャラ付けの部分でいい味出してるなって感じたので寧ろGJだと思います。キーワードを出す際の比喩表現も上手。
これらに比べて「血」の部分は話への絡みが薄く感じますが、ここまでで今回一位に挙げるには十分だったと思います。
本当に文句らしい文句が出てこないので逆に自分のオタク心が悲しんでますが、強いて言うなら、文字数制限が無い前提だとしたら先述した血のキーワードがもう少し重要な使われ方をしていてもいいかなと思ったのと、締めの握手は正にひび割れたビー玉にふた筋の光が差し込み輝いている瞬間そのものであるので、個人的にはもう少しガラス(ビー玉)寄りの比喩を用いたりして、スポットを右手に集めるよりその人自身(正確には心)が輝いている描写なんかを織り交ぜてフェードアウトしていくようなイメージで終わったほうが好きかなぁと思いました。(俺のこれ無理やり言ってる感があって苦しいですね・・・)
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続いてシアさんの作品。
この作品のすごくいいなと思ったところは、自出キーワードが「血」で、もちろん文中にも「血」という単語はよく出てくるのですが、日本語というか漢字の特殊なところで、その文字そのものに意味があるせいで、用いるだけで雰囲気が重くなったりします。例えば「血」は極端な話「死」を連想させたりしますし。
しかし、作品の軸に「血」を添えていますが、その軸の部分の動きを表現する際(あるるんさんのガラスの時のように、導入と締めで共通の表現を用いた上で違いを書くことで話の流れ、心情の移り変わりなどをわかりやすくしてるアレ)に「血」のさまをダイレクトに述べるのではなく、頬の染まった状態を用いることで話にやわらかさが出ているように感じます。血が流れたらどうなる?頬染まるじゃん!という感じで、こちらもキーワードに対する考察が成されているんだろうなぁと感じました。
また、あるるんさんの作品とは切り口が異なる(無知なので適したジャンル分けができない)ため、小説で頻繁に用いられる所謂「説明臭さ」がほとんどありませんでした。(例えば俳句で「晴れ渡り 雲一つない 夏の空」って詠んでたときに、『空』に対して「夏の空→暑い→太陽が出てる」と連想が可能なのに、わざわざ「晴れてる」「雲一つない」と説明し直している状態みたいなのを言います。俳句では文字数制限もあるので情報量を増やしたほうが良いとされます) ジャンルの混在でどっちつかずになったりせず、話の大筋がブレなくて非常に良かったですが、僕の読解力のなさの所為か、終盤の
「私の中に宿っていた優越感は消え去り、かわりに敗北感がまとわりついている。
だが、それでいて何か暖かみのあるものが心の中に流れ込んできたような気がした。」
「吐息が白く色付き、私の血は頬を赤く染めている。
しかし、それが高揚の血でない事は私しか知らない。」
の部分、当然「私」は女の子と目が合った上で意識的にちっぽけな優越感を足蹴にされたわけですから敗北感に襲われるとは思ったのですが、その後締めで頬を赤く染めているのは「悔しい、恥ずかしい」といった心情が起因してるものだと認識していましたが、その前で「何か暖かみのあるものが心の中に流れ込んできたような気がした」と書かれていたので、『温かみのあるもの=悔しい、恥ずかしい気持ち』という関連付けが自分の中でストンと落ちてこなかったこともあり、若干モヤっとしたのが1位として挙げなかった理由です。作品通して比喩表現が重要部分にしか用いられてない分、それを用いていたここは少し目立って見えました。この辺は僕の頬を染めた解釈が間違ってないかどうかも含め、正解というかどういう描写を狙ってたのか伺ってスッキリしたらまたイメージが変わってくるのかもしれません。
あ、あと話が前後して申し訳ないですが、シアさんもガラスを心理描写に用いてましたね。違和感もないしやっぱり書き手にしてみたら扱いやすいキーワードだったんですかね。
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最後はノアさん。
読んだら分かりますが、切り口がほかの二人とはかなり異なっていて、ノリもだいぶライトな感じで読み進められました。
そう、途中までは。
前者2人のお話もとても良かったですが、ノアさんに関しては話作りのセンスがかなりずば抜けてるように感じました。
もちろん切り口にたったひとつの正解なんてないですが、今回は順位がつく以上、「読み手の好みに話を合わせられる力」は結果に直結する可能性が高いです。
オタクが多い状況にライトな切り口は間違いなくひとつの解答だと思いますし、ライトな展開でレールに乗せてから、じわじわと展開していく構成のため一気に読めます。
それに加え、仮にも評価をするにあたり、全作品を何度も読み返していたのですが、この短い話の中でも綺麗に伏線を仕込んでいました。
例えば、
「もしかして私大勝利!?これならほんとうに見つけることができるかもしれない。まあもちろん盗まれて…ぬす…あーあーこほん、こほんこほん、ん?ん?まあ大丈夫でしょう!」
という部分、1周目に読んだときは「拾ってそのまま盗まれて」ということを指してるものだと違和感なく感じていましたが、2周目以降読み返してみると、「忘れていたことを段階的に思い出していく瞬間」であることが分かり、ほぁぁぁぁと一人で感嘆していました。
こういう展開をする上で、主人公の奇抜なキャラ設定はカモフラージュになるし、ライトな読み口がまさにマッチしていた点も話作りのセンスがすごいと感じた点です。
順位付けにおいてはそれぞれのキーワードが話に対して重要性が薄かったと感じたので1位には至りませんでしたが(財布を主軸に話が進んでいますが、強盗殺人犯が家屋に強盗に入って現金だけでなく財布を盗んだ上持ち歩くというのは、実際だとアシがつく等考えたときに売りに出すとも考えづらいのかなぁと思い、「財布」というのはキーワード用に設定したもので、話の大筋が出来ていたあとでその流れを壊さず、かつ他者も採用できるキーワードとして考えたのかなぁと思いました。まぁライトな切り口だった話に現実性もクソもないといえばそれまでですが。)、非常にいい作品でした。
・・・とまぁ、別に専門知識もないのに偉そうに批評する「ありふれたオタクの姿」をモロに晒したわけですが、どの作品も読んでて非常に楽しかったです。そして、自分が話し作りをすると絶対こんなに綺麗にできないと思うので素直に皆スゲェ・・・と思いました。
また機会があったらこういう面白い企画にヒョッコリ現れたいです。今回は本当にお声かけいただきありがとうございました!